太田螢一『働く僕ら』インタヴュー
[1987年当時の記事(誌名不明)より]

この本は、どういう発想から出来たのですか?
'81年から'83年頃まで「ゲルニカ」という音楽バンドに関わってきたんですけど、その2枚目のLPとして、労働歌集ばかり集めたものを作ろうと言ってたんです。「プロレタリア」という題名でね。でも、LPを出す前に、ゲルニカが解散しちゃったので、この構想をいつか形にしたいと思ってずっと温めていたんです。それが、今回の「働く僕ら」になったんです。
昭和初期を描いたものですか?
具体的にどの時代というのではなくて、機械的臭いのものを雰囲気で描きたかった。絵の中にドイツ語が多く使われてますが、機械の臭いというところで根本にドイツやロシアの美術の影響があるのかもしれませんね。ロシアに関しては、そのコミュニズムの臭いに魅かれました。
この本を描くにあたって、ずいぶん古本屋さんを廻ったとか。
"機械を描きたい"と思ったもので、ウソを描かないように努めました。戦前から戦後間もなくの本で、特にドイツの写真集を参考にしました。子供の乗り物の本の図解なんかが、かえってわかりやすくて、いい資料になるんです。
構想から完成まで6ヶ月かかったそうですね。
今回、いろんな職業をとり上げて、画面を作っていくなかで、どうしようかなっていう迷いがありました。“こういう職業を描く時、どうまとめられるんだろう? これで見落としはないだろうか”と、画面に定着される前に悩みました。
これは何を使って描かれたんですか?
烏口やロットリング。曲線は筆を使いました。軽オフセットを使うため、ハーフトーンの調子が出ないと言うので、スクリーントーンをたくさん使用したのです。きれいに印刷されない部分もありますが、そのもやもやした感じが魅力になってますね。
絵本に挑戦してみた感想は?
結果的に絵本とはちょっと違うものになったかな。作品集っぽいつくりになってしまった。今度はもっと子供を意識したオーソドックスな本物の絵本を作ってみたいですね。
出来上がっての感想は?
最初は油くさい感じの本になるかと思ったのですが、手帳のようにかわいい感じになって、自分では満足しています。愛着持ってますよ。
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"働くということ" "国家的な臭い"など見る人によって、様々な楽しみ方ができると思います。いろんな楽しみ方をして欲しいですね。

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