夢童子曼茶羅
天沼春樹著 太田螢一装幀・装画

1989年9月1日初版
ブックヒルズ・発行
教育報道社・発売
  夢と現実を自在に往還する不思議な
  御子の時空をこえた物語。
  夢から夢へ醒めていく、永遠に安住の
  地をえられぬ織物師の数奇な運命。
  変容と転生の織りなす奇誕の数々を
  あつめた遁走曲風物語集。
                  -----帯より

背・裏表紙にも別々の装画が。





「夢合戦」






全十点、描かれています。

「天竺夜話」の挿し絵
この絵は本体クロスの装画にも
挿し絵はお話ごとに
「傀儡師」


戯作者と絵師ひさびさに会う (当時の案内物より)
    天沼春樹氏、太田螢一、於 トムズボックス
太田 いゃーっ、どうも、そのせつは。
天沼 なかなか辛い仕事だったんじゃないですか。
太田 いえ、昔から谷崎潤一郎氏とか北原白秋なんか偏愛していて、それに近いものがありましたし、エキゾチイズムというか印度あたりの風物は描いてもいましたからね。こういうマンダラ的世界は好きですね。輪廻転生といっても、これがこうなんだっていうおしつけがなくって、わりかしそうなのかもしれないねって感じで物語が循環しているでしょ。それに、作者と物語の中の存在が、等身大ではないでしょう。今、そういう作風あまりないから、期待しているんです。
天沼 作為ってのはあまりないですね。だいたい、今度はじめて作品集だすんですけど、この種の物語はトランスのノリで書いてまして、構成なんか考えないでずるずるペン先から文章が生まれてくるプロセスを愉しみましたね。合田佐和子さんには負けますが。(註 トムズボックス発行『オートマチズム』参照) 前近代的というか、反近代的というか、霊媒かイタコのイタロウといいますか。太田さんのあのグニョグニョ曲線はどちらですか。
太田 ある日、自然に線がうねりはじめましてね。美しいものにおしつぶされていく世界を、有機的に、気持ちのよどみみたいなものを解放していくとああいう線が出てきたんですよ。
天沼 そして、象徴化して簡略化へ向かうのではなく、逆に書き込んでいくことで、
太田 そう、行程を増やしていくことが重要なんです。一色の色彩にいたるまで多くの色をかさねていくとか。 
天沼 見る者は、表面の色だけみているが、実はその下に幾重もの色が塗り込められている。後世の科学分析で発見されたりして。ダビンチみたいに。
太田 まったく別の絵が描いてあったりしてね。(笑)(あらたまって)だけど、芸術だなんてあんまり考えませんね。ただ、お気にいりの工芸品というつもりでつくってますね。
天沼 そうですね。じいさんになってから愛玩したいような作品を残したいですね。
太田 もう秋ですね。
天沼 はい。

『戒厳令』や『働く僕ら完成版』の独語訳もなさっている
天沼春樹氏とのコンビ第1作の物語集。コンビ第2作
『飛行船帝国』ご紹介ページも順次作成予定です。
天沼氏は、映像作品『たわわTV』にも
「優しい医者」役でご出演。
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